万年筆の構造
万年筆のペン先は使い込むほどに自分の書き方に馴染んで、なめらかに使いやすくなっていきます。
そう、自分にあった1本へと成長する筆記具です。
そんな自分らしいペン先で、好きなインキのにじみや濃淡を楽しみながら文字を書く時間は、パソコンやボールペンを使って過ごす日常とはまた違った世界です。
ただ、他の筆記具と違いメンテナンスや気を使う事が多そうなイメージがあるため敬遠される事が実情のようです。
確かにインクの付替えや保管などいくつかの注意点がありますが、逆に自分が手をかける1本だから愛情も湧きますし自分の書き方に馴染んでいくものなのです。
それではまずは基本的な万年筆の構造から見てみましょう。
万年筆メーカー、ブランドによって作りが異なってきますが、主要部分の役割は同じです。
万年筆で文字を書くのに重要な部分は、【ペン先】【ペンポイント】【ペン芯】。
【ペン先】は、金を採用したものが代表的です。
これはインクの酸におかされず、適度な弾力性と書き味があるからです。
14金/18金/21金と各メーカーやブランドによっていろいろなタイプが出ています。
一般的には数字が大きい程柔らかくなりますが、ペン先の形状やハート部分の大きさ、ペン先の厚みなどによっても硬さ・弾力が変わりますので同じ14金でもメーカーによって書き味が異なってくる事もあります。
また、現在では腐食しにくいスチールペン先もあります。
【ペンポイント】は、文字を書く場合は一定の筆圧を持って紙の上を走り続けるため、14金/18金/21金のように柔らかい金属では先端が摩耗してしまいます。
これを防ぐためにペン先の先端に耐摩耗合金が付いています。
字幅EF/F/M/Bなど、このペンポイントの大きさに影響されます。
よほどの事がない限りこの玉が飛ぶという事はないですが、万が一無くなってしまったらもちろん書けなくなってしまいます。
インクの入れ方
万年筆はもともとインクが入っていない状態です。
自分で選び、自分で入れるものが万年筆の醍醐味でもあり楽しみです。
万年筆のインクを入れる方式は大きく分けると2つあります。
簡単に入れられ、予備として持ち歩く事も簡単な「カートリッジ式」と、少し手間はかかりますが、直接インクボトルから吸入する「吸入式」。
「吸入式」は色数の少ないカートリッジと異なり豊富なカラーバリエーションが楽しめる事、また残ったインクをボトルに戻せるので経済的です。
「カートリッジ式」の中でも「コンバーター」を使えば「吸入式」と同様にインクボトルから吸入する事ができます。
※カートリッジ専用でコンバーターの使えない万年筆もあります。
【カートリッジの装着方法】
簡単に取り外しができるカートリッジは、万年筆の同軸をはずし、ペン先を上に向け、カートリッジを差し込みます。
カートリッジは回さずにまっすぐ差し込みましょう。
回しながら差し込むと首軸の内部を傷めてしまう事がありますのでご注意ください。
カートリッジを装着したら、インキが先端に到達するまでしばらく置いてから試し書きをしてみましょう。
インキが出てこない場合は、カートリッジを両側から軽く押し、ペン先にインキを送りだすとスッと書けるようになります。
尚、カートリッジの形状は各メーカーやモデルによって異なりますので形状の合ったインクカートリッジを使用するようにしてください。
【コンバーターによるインキの吸入方法】
コンバーターを使えば、ボトルインクから吸入して使う事ができます。
現在一般的なのが、このコンバーターとカートリッジの両方が使用できる両用式です。(一部コンバーターを使用できないモデルもあります。)
ボトルインクもカートリッジも使え、用途によって使い分けが可能です。
コンバーターもカートリッジと同様、形状はメーカーやモデルによって異なります。
ここでは、ラミーサファリ万年筆 スケルトンタイプを使ってご説明いたします。
コンバーターの使い方
カートリッジインクと同じようにコンバーターを首軸にまっすぐに差し込みます。
中にある突起の部分と噛み合わせる形になりますのでこの突起部分を傷めないよう気を付けてください。
インクはコンバーター内のピストンで吸い上げますのでまず、ピストンをつまみ(赤い部分)を回し下まで下げた状態(A)にし、その状態でペン先をボトルインクに浸し先程と逆に回しながら(B)インクを吸い上げていきます。
その際ペン先が傷ついてしまいますのでインキ瓶の底に当たらないように注意しましょう。
インキの吸入が終わったらペン先と首軸の部分をよく拭き取り、インク充填完了です。
ちなみにラミーのボトルインクにはインク吸取紙が付いてます。
万年筆の基本的な書き方/ポイント
手軽で実用性の高い油性ボールペン。
揮発・乾燥に強い、書いた文字が変質しにくい、筆記距離が長いのが特徴です。
ボールとホルダーの隙間にインクが流れボールに定着したインクを紙面に伝えます。
このボールを回す為にある程度の筆圧が必要となってきます。
一方、万年筆では毛細管現象を利用してインクが流れるように工夫されたペン芯を通ってペン先、ペンポイントへとインクが伝わりペンポイントと紙面があたった状態で書けるようになります。
このためボールペンと違って余計な筆圧をかける事がないのがポイントです。
極端な話ですがペンを手のひらに添えて引くだけでも線が書ける程なので強い筆圧は必要ありません。
逆にボールペンのように筆圧をかけすぎてしまうとペン先が開いたり曲がったりして文字がわれたり、書けなくなることもあるので注意してください。
書く際は、ペン先の刻印のある面を表向きにして、ボールペンよりもやや寝かせ気味に書きます。
キャップは本体の後ろに差す事でベストなバランスになるように設計されていますが、好みによりはずしていただいても結構です。
少し難しそうに思われがちですが万年筆は簡単なポイントさえ押さえれば毎日手軽に使える筆記具です。
また、万年筆で書いた文字は味があります。(個性のある文字が書け、書いた時の気持ちまで表します)
まずは自分の文字を書いてみましょう。
万年筆の基本的なペン先/字幅
ペン先の種類は先に述べました通り14金/18金/21金などの種類がありますが、更に様々な字幅が用意されています。
基本中の基本では、
極細(EF:エクストラファイン)
細字(F:ファイン)
中字(M:ミディアム)
太字(B:ブロード)
以上があります。
各メーカーではそれぞれの間にあたる字幅や柔らかさ、インク出などの特殊的なペン先も用意していますので好みや用途によって幅広い種類から選ぶ事が可能となっています。
【極細・EF】
細い線がクリアに書け、システム手帳などの小さいものへの書き込み用として人気です。
また、簿記などの記帳にも適しています。ペンポイントがかなり小さいので書く人によってはカリカリと引っかかる印象をもたれる事もあります。
(上の画像はオリジナル万年筆14金 システム手帳リフィル4.5mm罫)
【細字・F】
ノート、日記、手紙、履歴書など用途の幅は広いです。
1枚の紙にたくさんの美しいきめ細やかな文字を楽しむ事ができます。
最近は細罫のノートが多いので特に人気の字幅です。
(上の画像はオリジナル万年筆14金 MDノート7mm罫)
【中字・M】
凡用性が高く、幅広く使われる定番品と言えるものです。
手紙や少し大きな文字を書く方におすすめです。
極細・細字に比べペンポイントが大きい分インクの出が良く感じられ初めての方でも万年筆で書く楽しさを感じられると思います。
(上の画像はオリジナル万年筆14金 MDノート7mm罫)
【太字・B】
宛名書きやサイン、チェック、校正などに大きくノビノビと書きたい方におすすめです。
一般的な筆記具としてより、ここぞという時に持っておきたい字幅です。
右の画像はできるだけ同じマス目内に同じような大きさでそれぞれの字幅を書いてみました。
【その他のペン先の一部をご紹介】
画数が多くハネ、トメ、ハライなどがある漢字を中心に用いる私たちにあわせた国産メーカーのペン先とアルファベットなどの横文字を中心に用いられる舶来メーカーのペン先では、同じ字幅表記でも太さが違って見える場合もあります。
一般的には同じ表記であっても国産メーカーより舶来メーカーの方が少し太く感じると思います。
また、ボトルインクから直接ペン先にインクをつけた状態ではインクの量が多いためカートリッジやコンバーターからペン芯に伝わって書くより太く感じる事がありますので注意が必要です。
「左側の画像」
上部黒文字:オリジナル万年筆14金・EF
下部青文字:ラミーアルスター・EF
「右側の画像」
上部黒文字:オリジナル万年筆14金・M
下部青文字:ラミーアルスター・M
万年筆の基本的なお手入れの仕方/ポイント
万年筆が書けなくなった・・・。
と言われる中で一番多い原因は「インク詰まり」です。
インクの水分が蒸発してペン芯、ペン先などにインクの成分が詰まっている現象です。
長期間使用する予定がなかったり、インクの色を交換する時には、洗浄が必要となります。
そんなに難しいものではないのでぜひ覚えておいて下さい。
カートリッジインクの場合はカートリッジをはずし、コンバーターの場合は残っているインクをボトルに戻してください。
その後ペン先を洗浄します。
コップに水か40度前後のぬるま湯を用意し、ペン先ごとコップに入れます。
コップに入れておくのは1~2時間ですが、しばらく使ってなかった時には、寝る前に水やぬるま湯に一晩入れておくとより効果的です。
ペン先を入れた直後は水やぬるま湯がインキで濃く染まる事がありますので数回交換してきれいな状態で行いましょう。
コンバーターの場合はコンバーターを装着したままペン先をコップに入れてインキを吸入するように水を繰り返し出し入れする事で洗浄する事ができます。
汚れがひどい場合はコンバーターを取り外しカートリッジ同様にペン先ごと洗浄してください。
コップからペン先を取り出したら首軸からペン先に向けて流水で洗い流し、柔らかい布で水分をよく拭き取り、乾かして洗浄は終了です。
定期的にお手入れをする事で万年筆をより長く愛用する事ができます。
使用していない時にはペン先の保護やインキの乾燥を防ぐ為にもキャップを閉める事も大切です。
万年筆のキャップには回しながらはずすタイプとまっすぐ引き抜いてはずすタイプがありますのでご注意ください。
万年筆は使う程に手に馴染む筆記具です。
毎日少しずつでも書いてみてください。
使い続ける事で自分にあった書き心地になります。
また、最高のメンテナンスにもなります。
万年筆をお買い求め頂くお客様や修理でお預かりする機会の多い当店では親子で2代、3代引き継いでという方の年季の入ったステキな万年筆を見せて頂く事もあります。
大切に正しくお使い頂ければ万年でも使えると言われる筆記具。
手紙や履歴書などを書く特別な時だけでなく、手帳に予定を書き込んだりサインをしたりする際など、いろいろなシーンでお使いください。
インクの色を変えたりペン先の種類を変えてみたりと、
あなただけの「書く為の道具」としてぜひお楽しみください。